はじめに

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東京慈恵会医科大学大学院 麻酔科学・疼痛医学講座(東京慈恵会医科大学附属病院 ペインクリニック)のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。慢性痛は単なる身体的な苦痛にとどまらず、意欲の低下や気分障害を引き起こし、患者さまの生活の質を著しく損なうことがあります。そのため、私たちは患者さま一人ひとりの痛みの背景にある身体的、心理的、社会的要因を丁寧に探り、最適な治療法を提供することを目指しています。

当院は、厚生労働省が推進する「痛み治療の拠点病院(痛みセンター)」として、整形外科や脳神経外科などの他診療科と密接に連携しながら、学際的な治療を実践しています。薬物療法や神経ブロック療法、心理療法、運動療法など、さまざまな治療法を組み合わせることで、患者さまの痛みを軽減し、生活の質を向上させることを目指しています。また、痛みが重大な疾患の警告信号である場合もあるため、総合病院としての強みを活かし、他科と連携して迅速かつ適切な診断と治療を行っています。

さらに、当講座では、痛みのメカニズム解明や新しい治療法の開発に向けた研究活動にも力を入れています。特に、慢性痛の脳内メカニズムを解明するための機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた研究や、痛みの認知や脳内修飾機構に関する研究を積極的に進めています。これらの研究は、慢性痛の治療における新たな可能性を切り拓くものであり、国内外の学術会議や国際的な学術誌での発表を通じて、広く情報を発信しています。

また、当講座では、次世代の医療人材の育成にも注力しています。大学院生や若手研究者に対して、痛みの診療と研究の両面で指導を行い、彼らが将来、痛み治療の分野で活躍できるよう支援しています。私たちの研究室では、痛みの脳科学や神経科学に関心を持つ多くの若手研究者が集い、日々新たな発見に挑戦しています。

今後とも、当講座の活動にご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

東京慈恵会医科大学大学院 麻酔科学・疼痛医学講座 教授
(東京慈恵会医科大学附属病院 ペインクリニック)診療部長
倉田 二郎